退院延期

7月2日(日)夜
月曜日に退院の許可が下りたので、みんなに
「明日帰りまーす!お世話になりました。」と、挨拶をした私たちですが、
夕方になって由紀子が熱を出しました。
37.6度
最初は数日前から、咳が出ていたので風邪を引いたのだろうと思っていました。
夜中、だんだん咳がひどくなって、熱も38度台に・・・。
それでも、由紀子は看護師さんに氷まくらを作ってもらって気持ちよさそうに眠っていました。
その寝顔を見ながら、明日の退院がどうなるのか・・・不安なまま眠れない母でした。

それに、病室の方たちは、手術をしたばかりの年配の方ばかりです。
風邪をうつしたら大変なことになります。
残っても、みなさんの迷惑になる・・・考えれば考えるほど不安になって眠れませんでした。

7月3日(月)
朝早く、担当医のN先生が様子を見に来てくれました。
そして、由紀子のお腹を触った後で、思いがけない言葉を言い残していきました。
「お腹の中に、膿の塊があるかもしれない!CTで検査をしましょう。」

あ・・・( ̄▽ ̄;)
その時、手術前に説明された事を思い出しました。

「お腹の中で、虫垂が破れているので、お腹の中にばい菌が散っています。
きれいにしてからお腹を閉じますが、菌が残っていたら化膿することもあります。
お腹の中から虫垂を出すときに傷口にも触るので、傷口が化膿することもあります。」

目に見える傷は順調に治っていたので、何もかもうまく行っていると思っていました。
まさか、お腹の中で化膿をしていたなんて・・。
本当にお腹の中で化膿しているとしたら、また開腹するのだろうか?
ただの風邪だと思っていた私は、あまりの不安に身体が震えました。

すぐにCTを撮ってもらえるのかと思っていたのですが、運悪く今日は月曜日。
CT室の検査の予約は一杯のようで、なかなか由紀子への呼び出しがありません。

お昼になり・・・1時になり・・・2時になり・・・ただ待つしか出来ない私は焦っていました。
きっと思いつめた顔で座っていたのでしょう。
担当の看護師さんが心配をして声をかけてくれたとき、思わず
「お腹の中で化膿しているのなら、一刻も早く治療を始めなければ、また腹膜炎のようになるかもしれない!」
と、言って涙を流してしまいました。
「そんなに急には悪くならないから・・・」と、慰めてもらっても私の不安は消えません。
また、由紀子の変化を風邪と軽く考えてしまった自分が情けなくて仕方がありませんでした。

4時過ぎ、やっとCT室から呼び出しがありました。
また車椅子に乗せてもらった由紀子は嬉しそうでした。

そして、その結果。
やはりお腹の中に膿の塊がありました。
「また切るんですか?」
担当医の先生に恐る恐る聞きました。
「抗生剤の点滴でやってみましょう。僕ももう切りたくないからね!」
ε- (´ー`*) よかった!!

結局、夜から点滴が始まり、退院は一週間の延期になりました。o( _ _ )o ショボーン

7月4日(火)
入院が延びたことを由紀子が受け入れてくれるのだろうか?と、心配をしたのですが、
由紀子は思ったより、きちんと理解しているようでした。
「治ったら帰ろうね!」
そう、由紀子に言われて
「そうね!」と、
反対に励まされてしまった私でした。

でも、冷静になってみれば、熱を出したのが入院中でよかったと思います。
家に戻っていたら、また風邪と思って手遅れにしてしまうところでした。
由紀子の言うとおりです。
「ちゃんと治してから、おうちに帰ろうね!!」

7月5日(水)
この日はもう熱も下がって、
お腹の痛みも取れたようで、
落ち着いていました。

点滴は朝と夕方の2回なので、
他は何もすることがありません。
家にある、由紀子の本を
持ってきてもらいました。

由紀子の宝物
「セーラームーン」の本です。
お父さんとねーねーが
重い本を抱えて来てくれたのに
「本が足りない!」と
文句を言う由紀子です。

家の本を全部持ってきたら
あなたの寝る場所はなくなってしまうでしょ!
(☆_@;)☆ \(`-´メ)

7月6日(木)
由紀子が元気になると、ついつい退院のことが気になる母です。
点滴を5日間すると聞いていたので、もしかしたら明日(金曜日)には退院できるのかも・・・と、期待したのに、
担当医の先生が言うには
「最初の点滴が夜からだったので、土曜日の朝まで点滴!だから、退院は月曜日!」
ショック(☆_◎;)!

点滴が・・・。

7月7日(金)
短冊に「はやくおうちに帰れますように!」と願い事を書いたのに、七夕になっても家には帰れませんでした。(。>_<。)
そして、この日の点滴で事件は起こりました。
もともと血管が細くて見えにくい上に、太って脂肪が多い由紀子は、針がなかなか入らず
点滴のたびに看護師さんを悩ませて続けていました。
毎回2・3回は針の刺し直しをしなければ入りません。
1回で命中させた看護師さんは大拍手です。
お腹の化膿を治すための点滴は5日間で10本の予定です。
この日の朝の点滴が8本目。

今日も担当の看護師さんが血管を捜して針を何度か刺したのですが、どうしても入りません。
その後、看護師さんが次々に交代して挑戦するのですがどうしても駄目です。
最後には師長さんまで連れてこられたのですが、また駄目!
看護師さんたちも必死です。何度も由紀子に謝りながら頑張ってくれたのですが、
結局2時間、由紀子は両手両足に何度も針を刺しては抜きを繰り返すことになってしまいました。

最後にドクターが呼ばれて、挑戦することに・・・。
若い研修医の先生だったので、もしかしたらまた駄目かも・・・と、思っていたら・・・。
なんと2回目で成功!グー♪(*゜ー゜*)b
ラッキーなことに、この先生、6月30日まで小児科での研修だったそうで、
赤ちゃんの細い血管に点滴をしてきた経験が役に立ったのです。
思わず本当に拍手をしてしまいました。

この後、由紀子の身体に残った針のあとを数えたら、14箇所以上ありました。
2時間以上針を刺され続けた由紀子ですが、「痛い!」と言いながら、泣くことも暴れることもありませんでした。
本当によく我慢をしたと思います。

今考えれば、あんなに何回も刺さなくてもよかったのではないかと、思うのです。
由紀子の身になれば、残酷だったよなぁーって。
でも、あの時は看護師さんも私も点滴のことだけを考えて、
針を血管に入れることが最優先だと思ってしまったのですよね。

あの時、由紀子が泣き叫んでいたら、どうだったのでしょう?

なんだか、今回の病気では後悔の連続です。

この後、担当医の先生がこの様子を聞いて、10本予定していた点滴を8本で終わりにしてくれました。
でも、土日は様子を見るために、退院は予定通り月曜日。
ちょっと残念だったけど、針を刺す苦痛からは開放されると思えば嬉しいことでした。

パニック

この日の夜、
いつもなら9時過ぎには眠ってしまう由紀子が眠れずにいました。
やはり、あの点滴事件が影響しているのかもしれないと思っていたら、
12時近くになってパニックです。

突然泣き出して、頭を叩いて大声を上げます。ガンガンガン (ノ><。)ノ))...
病室のみんなが驚いて目を覚ましてしまいました。
看護師さんも慌てて駆けつけてきてくれたのですが、どうしようもありません。
みなさんに謝りながら、由紀子をなだめて・・・・ついに心配していた状態になってしまいました。

最後の手段は薬です。
以前からパニックのときに使ってきた、睡眠作用のつよい安定剤を飲ませて寝せることにしました。
薬を飲ませて30分後、由紀子は泣き寝入りをしました。

昼間は針を刺されても平気そうな顔をしていた由紀子ですが、本当はいっぱい我慢をしていたんですね。
いつもそうです。その時は我慢をして、後からフラッシュバックを起こしてパニックを起こしてしまうのです。
自閉症という障害をつらいと感じるのはいつもこんな時です。

由紀子が寝た後で、ナースステーションに行くと昼間、点滴を入れてくれた研修医の先生がいました。
さっきまでパニックを起こしていたことを告げると、眠っていることを承知で病室まで行って由紀子の様子を見てくれました。
小児科にいたというこの先生は、由紀子がパニックを起こしたことの意味を解かってくれたのかもしれません。
そこで、明日の夜もパニックを起こすようならば、もう限界なのかもしれないので退院を早める事を考えてほしいとお願いをしました。

7月8日(土)
強めの安定剤を夜中に飲んだ由紀子はなかなか目を覚ましません。
検温の時間も、朝食の時間も、声をかけても目が開きません。
9時過ぎに一度目を覚まして食事をしたのですが、また眠ってしまいました。
薬のせいなので、時間がたって効果が切れるのを待つしかありません。

そんなところに担当医の先生が来て、今日退院をしていいと言ってくれました。
その代わり、家で熱を測って様子を見ることになりました。
少し不安はありますが、やはり家に戻れることは嬉しいことでした。

そして、由紀子が目を覚ますのを待って、お昼過ぎに緊急退院をして家に戻ってきました。
緊急入院・緊急手術・緊急退院・・・なんとお騒がせの患者でしょうか?!(笑)

家に戻って最初にしたことは
やはり、パソコンでした。

2週間という長い時間
パソコンもCDも
みんな我慢をした由紀子です。

毎度の台詞ですが
私が思う以上に
由紀子は大人になっていました。(笑)

この2週間後、由紀子は再入院をすることになってしまいました。
そのお話はこちらから