1999年2月
1日(月)
鬼のお面が完成したらしい。
園長先生のところに用があって行った時
「今日は尾上先生に怒られていましたよ」
と聞いていたので寝る前に
「尾上先生にメッ!て叱られたろう?」
と聞いたら
「ガオー!」
と答えた。そうかガオーッて怒られたのか、
笑ってしまった。
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2日(火)
脳波三回目。
やはり失敗。
朝6時に起こして昼寝の時間に
検査室のベットを借りて寝せつけてやっと寝たのだが、
器具をつける途中でおきてすべてむしり取ってしまった。
とうとう検査室の人には見放されてしまった。
「もう無理です」
と小児科に言いに行ったら入院してやろうという事になった。
小児科の松尾先生は脳神経内科が専門ということで
脳波の機械も先生が動かしてくださることになった。
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3日(水)
療育センターをキャンセルすることにした。
由紀子の体調もいまいちだし、
私自身も咳きがひどくて……。
でも、一番の理由はホテルに泊まるのが怖い。
節分の豆まき。
お父さんが鬼になってみんなで豆をぶつけるが
由紀子は手に豆を持ってお父さんの側に行きパラパラとかけてやる。
お父さんは「やさしい子だ」と感激するが、
本当は投げるのか苦手なのです。
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4日(木)
明日は保育園のお誕生日会。
インタビューがあるので家で予行練習をした。
「何歳ですか?」→「6歳です」(おお!よくできました。)
「すきは食べ物は何ですか?」→「みかんです。」(去年はりんごだった。)
「大きくなったら何になりたい?」→「お花屋さん」(……すごい!去年まで尾上先生だった。)
きっと尾上先生がばっちり練習させてくれているのでしょうが、立派な答えでした。
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5日(金)
今日は保育園のお誕生日会だった。
「大きくなった……。」の質問にはやはり
「お花屋さん」
と答えたらしい。
先生もクラスの子もびっくりしたとお便り帖に書いてあった。
先生が練習させた訳ではなかったらしい。
大喜びをしていたら、長女が謎解きをしてくれた。
「トトロの中に『お父さん!お花屋さんね!』という台詞があるよ」
ガ〜ン!余計なことを言うな。
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6日(土)
「今日は土曜日です。」と私が言うと
「給食食べたらお迎えです。」と由紀子が答える。
最近の土曜日の合言葉です。
休みの日には1番は○○、2番は○○とスケジュールを決めることも日課になりました。
これができるようになってパニックがなくなった気がする。
本に書いてあることをやってみたのだが、
こううまく行くとやはり由紀子は自閉症か・・・と変に納得したりして……。
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7日(日)
日曜日はサティに行って、ビデオを見て…。
なんだか毎週同じ事をやっているような気がする。
由紀子との時間を有意義に過ごせないものか?
最近由紀子が太ってきたことも気になる。
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8日(月)
朝食後咳きこんだ拍子に由紀子が少し吐いてしまった。
いつもならば様子を見て保育園に連れていくのに
今日はどうしても連れていく気にならなかった。
痙攣したときのことが頭に浮かんで私のほうが震えが来そうになった。
夕方帰宅したお父さんに保育園を休ませた事を言ったらバカにされたが、
自分でもなんだかわからない怖さがある。神経不安症になりそう。
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9日(火)
保育園に連れていったら尾上先生に
『元気になった?』と声をかけられた。
「痙攣を起こしたときのことが思い出されて、休ませてしまった」
と答えたら
「なるほど、そういう事か」といわれた。
先生には解っていただけたような気がする。
由紀子は退屈な家から開放されたというように元気に教室に入って行き、バイバイもしない。
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10日(水)
今日は由紀子のお誕生日です。
朝に起きてきて最初に「お誕生日!」と言いました。
昨日みんなに明日はお誕生日だと言われたのを覚えていたのでしょう。
ケーキのろうそくを吹き消すのも上手になりました。
6歳です。元気な1年生になりますように。
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11日(木)
由紀子が大好きなサティに買い物に行く途中。
車の後部座席にいた由紀子が急に
「見て見て!」
と言って何かを指差して言った。
新しい車の看板だったのだが
由紀子が「見て!」と言ってそんな表現をしたのは初めてだった。
人に同意を求めてくるなんて…。びっくりしてしまった。
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12日(金)
保育園で使っている絵本の教材に鬼の顔を書くところがあったらしいが、
クレヨンで泣いた顔、笑った顔、怒った顔と
三パターン課題にそって書いていたとおたよりにあった。
見てみたい。
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13日(土)
若竹の会のお遊び会に行く。
豆まきをした後、新聞紙を使って大騒ぎで遊んできた。
なかなか自分から仲間に入って行かない由紀子だけれど
私が手を引いて無理に中に入れてやるとけっこう楽しそうにしていた。
ダウンの愛ちゃんに毎回叩かれるものだから
今日は顔を見ただけで走って逃げ回る。
由紀子の怖さも解るし、
愛ちゃんの愛情表現(?)の強さに申し訳なさそうにしているお母さんの辛さもわかる。
どうしたものか悩んでしまう。
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14日(日)
今日はバレンタインデー。
私が用意したチョコレートを
お父さんとおじいちゃんに渡して由紀子が点数を上げていた。
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16日(火)
入院して脳波を撮ってきた。
何とか無事に終わってほっとしている。
薬が効いているのは確かなのだが怖くて眠れないらしく
必死に目をあけようとする。
回りの人には申し訳ないのだが
由紀子をこんなつらい目にあわせなければならないことが悲しかった。
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17日(水)
保育園でも昼寝ができなくなっているようだ。
眠ってもすぐに目を覚ましてしまうらしい。
怖いのだろう。
今日は遠くの公園まで連れていってもらって
たくさん遊んだので疲れているはずなのに夜も寝ない……。
ユキちゃん、もう終わったんだよ!ゆっくり寝てもいいんだよ!
何度話してやってもはっきり通じない自閉症にもどかしさを感じる。
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18日(木)
保育園に迎えに行ったら
「おうちに帰ろうか?!」
と何度も聞いてくる。
これも脳波の後遺症にひとつかもしれない。
「おうちに帰るよ!おうちで遊ぼうね!」
と答えると、うれしそうにしていたが、
車に乗る前にもう一度「おうちに帰ろうか?!」と聞いてきた。
今回は本当に由紀子には負担の大きな事だったようだ。
結果はもうどうでもいいような気がしている。
もう検査は当分ないだろう、それだけでいい。
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19日(金)
脳波の検査結果を聞きに行った。
1個所怪しい波形があるという。
てんかんがあるともないとも断言できない状況らしい。
「おかあさんがどうしても薬を飲ませたくないと言われれば
今回までは薬を待ってもいいですが、どうしますか?」
と聞かれた。
残酷な質問です!
私はとうとう決められなくて
「先生はどうお考えですか?」
と反対に聞いてしまった。
「僕は飲ませたほうがいいと思います。
プールやお風呂、ジャングルジムの上などで発作が起きたときは
命取りです。」
「わかりました。始めてください!」
久しぶりに泣いてしまった。
どうして由紀子だけがいくつも重荷を背負わなければならないのか。
気持ちの持って行き所がなくて…・・衝動的に髪を切りに行ってきた。
帰宅したお父さんも口数が少ない。
やりきれない!
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20日(土)
尾上先生に薬に副作用の話をして今後のことをお願いしてきた。
小児科の先生が言われた
「少しおとなしくなるかもしれませんよ」
の言葉で、由紀子のニコニコが消えたらどうしようかと不安でたまらない。
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21日(日)
お昼寝をしていないせいか薬を飲んで30分ほどで寝てしまう。
でも、朝などはあまり変化を感じなかった。
このまま普通に生活できますように。
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22日(月)
昨日の夜中はせきがひどくて親子とも眠れなかった。
朝に薬を飲ませて少し休ませて保育園へ。
保育園では気になるほどは咳きもなかったらしい。
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23日(火)
保育園の帰りの車の中で急にアニメの踊りを踊り出す。
なんとも楽しい子だ。親の心配も知らないで。
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24日(水)
由紀子のお腹がデップリとしてきて
ズボンがお腹の下まで下がってしまうようになった。
お菓子を食べるわけでもないのにどうしてこんなに太ったのだろう。
「やっぱり我が子だ!」
と冗談ばかりは言っていられない。
来週から保育園の登園はバスに変更することに決めた。
学校に入る前に歩く習慣もつけておきたいし。
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25日(木)
お迎えに行くと非常用の滑り台でクラス全員遊んでいた。
何度も階段を駆け登ってはすべる、
けっこう長い滑り台だからみんなご機嫌です。
由紀子も1回滑って見せてくれたがすごいスピードで滑っていた。
もともと滑り台は好きだけど
いつも足でブレーキをかけながらゆっくりと降りてくるのだが今日は速い!
由紀子は元気だ!
長女に
「ユキちゃんに,薬を飲ませるのがそんなに嫌なの?
薬を飲めば発作を起こさないのならそのほうがいいじゃん!
由紀ちゃんではなくてお母さんは自分が辛いんじゃないの?」
と言われ…その通りで返す言葉がありませんでした。
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26日(金)
保育園の帰りに尾上先生の横を通りながら
「まったね〜!」
と言う。
机で書き物をしていた尾上先生がガクッとしていた。
その後お見送りの先生に
「早くおいで!」
と言って先生を笑わせていた。
なんだか今日はさえてる感じ。
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27日(土)
保育園にひな壇が飾られていた。
先生のお手紙に、
「みんなが遊んでいる中、
一人でひな壇の前に正座してじっと見つめていた」
と書いてあった。
触りたくて近くに寄ってはお友達に止められていたとも書いてあった。
慌てて由紀子の雛人形を出してやったらうれしそうにひな祭りの歌を歌っていた。
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28日(日)
とてもいい天気だったので由紀子を連れて公園にいった。
保育園のお友達が来ていて由紀子をうまくリードして遊んでくれた。
きっと保育園でもこうして遊んでくれているのだろう。
初めは逃げ腰だった由紀子が最後は楽しそうに後ろについて走っていた。
この子たちと普通学級に行ったならば由紀子は楽しいかもしれない。
もしかしたら普通学級でも良かったのではないだろうかと
しっかり決めたはずの心がゆれてしまった。
でも、学校は遊びの時間だけではない…・・わかっているのです。