1998年10月

1日(木)
車に乗る時に自分でドアを開けることができるようになった。
手のひらや指に力がついたのだろう。
ドアが開いた時の得意そうな顔がかわいい。

2日(金)
いよいよ明日は福江まつりです。
2回目の参加だけど、
去年の初日は回りのムードに押されて地面に立つことができず、
ずっとダッコにおんぶだった。
今年も1日目は覚悟しなければいけないかも。
でも、2日目は最後までねぶたを引いて歩いてくれた。
この事は私にとっても、由紀子にとっても
大きな自信になったから今年もがんばろうと思うのです。

3日(土)
福江まつりの初日が終わった。
今年の由紀子は去年とは違ってしっかりしていた。
集合して出発するまでの時間に何度かダッコをせがんできたが、
「がんばろうね!」と声を掛けると
後ろから抱き付いて我慢することができた。
ねぶたが出発すると去年を思い出したのか、
時には「ラッセーラ」と声まで出してニコニコして歩いていた。
途中見物人の中に何人か知り合いの人に声を掛けられたりしたが
由紀子はあまり反応しなかった。
でも、担任のO上先生が手を振って応援してくれる姿を見つけた時には
嬉しそうな顔をして「おのうえせんせい」と呟いていた。
先生とのつながりの深さを見たような気がした。

4日(日)
王直まつりのイベントで唐船に乗って1時間ほど海の散歩に出かけた。
思ったより小さな船で音楽が大きな音で鳴っていたりしたので
由紀子は耐えられるか心配だったけれど
私のひざの上でじっと海を見ていた。
「我、自閉症に生まれて」の本の中に
船に乗った時の苦痛さが書いてあったことを思い出して、
もしかしたら由紀子も辛かったかもしれないと少し後悔した。
ねぶたは2日間とも最後までがんばりぬきました。えらい!!!!!

5日(月)
保育園でもお祭りごっこをして遊んだそうだ。
由紀子はハネトの鈴をつけてもらってご機嫌だったとか。
親は昨日の疲れで体が痛い。

6日(火)
最近、夕飯の時によそったご飯を
それぞれの席まで運ぶのが由紀子の仕事になりました。
今日もお姉ちゃんにもらったお茶碗をお父さんの席に運んで、
そばに寝ていたお父さんに「お父さんごはんよ」と声を掛けていた。
声を掛けられたお父さんはビックリしたように飛び起きて席についていた。

7日(水)
由紀子が今こっているのはジグソーパズル。
保育園でできるようになったという
アンパンマンの「あいうえおのパズル」と
お誕生日会でもらった「小さなパズル」と
付録についていた「秘密のあっこちゃん」のパズル。
毎日あきもせず、作っては壊しの繰り返しで遊んでいる。

8日(木)
保育園でお散歩の時間に図書館に連れていってもらったらしい。
保育園では人の本を欲しがったりしない由紀子が
図書館でお友達の本を欲しがって
「かして!かして!」と騒いで先生に叱られたらしい
(我が家ではいつものことなのだが……)。
場面が変わるとルールが分からなくなることを改めて感じた。

9日(金)
教育委員会から就学のための健康診断のはがきが届いた。
まだ普通学級にするか、特殊学級にするかの打診もない内に
はがきが来るとは思っていなかったので
なんとなく複雑な感じがした。
先日若竹の会の集まりの中で
今年は特殊学級に1年生が3人も入るかもしれないと聴いた。
由紀子と多動の子と、ダウンの子……。
私が思い描いていた特殊学級とは少し違ってくるかもしれないと思った。
特殊学級に入れようと決心したはずの気持ちがまた揺れている。

10日(土)
体育の日でお休みなので、朝からスーパーへ連れて行く。
由紀子に言わせると「マクドナルドのスーパー」なのだそうで
スーパーに着くと同時にハイテンションで走り回っていた。
大好きなトトロのぬいぐるみや、ビデオがたくさんあるのだが
いつもの事で大好きなものは苦手!
ビデオが映されると全力疾走でその場から逃げ出してしまう。
そのくせ、家に帰るとトトロのビデオがみたいという。私にはわからない!

11日(日)
コスモスの花がきれいに咲いているというのでドライブにいく。
正直言って私は花が少なくさびしい感じがしていたのだが、
由紀子はコスモスの花の中でとても感激したように
「わあー!きれい!」とうれしそうにしていた。
あまりに嬉しそうにしているのでもしかしたら、と思って
由紀子の視点まで下がってみたら、
なんと一面花ばかり、すばらしい景色だった。
しばらく花の中に座って由紀子の世界で遊ばせてもらった。
時には由紀子の視点で物を観る事も大事だなと思った。

12日(月)
台風が近づいているので今回も療育をお休みしてしまった。
明日がまーまー(次女)の修学旅行の出発日でなければ無理をしても連れていったのだが、
もしも帰りのジェットフォイルか欠航したらと思ったら船に乗れませんでした。

13日(火)
O野先生を迎えに大波止へ。
次回の療育は26日になった。
今日は子ども劇場の例会日だったが
「ゆきちゃん、お歌を聴きに行こう」と言った途端
「おしまい!」が始まって「いかない!」「いかない!」と大騒ぎになってしまった。
この前見に行った少年少女合唱団の時の後遺症らしい。
すっかり文化会館が苦手になってしまったらしい。
今日は例会をパスする事にした。

14日(水)
よいお天気だったので保育園で河童公園まで散歩の行ったらしい。
かなり遠い公園なのだが、みんながんばって歩いていっているのだろう。
今日は公園にカモやカメがいて
由紀子は他の子どもたちに手を引張られながら走り回っていたそうだ。

15日(木)
最近字が上手に読めるようになった由紀子。
保育園で絵カードの下に文字カードを張っていくゲームをした時、
由紀子も参加したそうだ。
クラスの子どもたちは由紀子が字を読めるようになった事に気づいていなかったらしく、
上手に張るのを見てみんなびっくり!
大拍手をもらったそうだ。

16日(金)
明日は保護者講座の日。
毎年バザーのための作品作りをするのだが
私が講師を務めて3年目になる。
いつもは夜なのだが今年は土曜の午後にする事になった。
由紀子は保育園で預かってくれるという。
予定の変更に弱い子なので不安だが、O上先生に任せてみる事にする。

17日(土)
台風で雨風がひどい中、講座は予定通りに行われた。
講座の内容も心配だったがやはり由紀子の事が1番心配だった。
保育園に行ってみると由紀子はもう既にお昼寝をしていた。
私の声に少し目を覚ましかけて泣いたがすぐにまた眠ったらしい。
土曜日にお昼寝をする子は10人程度しかいなかったが、
由紀子はあまり戸惑う事もなかったらしい。
由紀子にとっての保育園は家庭のようになっているのかもしれない。

18日(日)
台風は行ってしまったが天気はいまいち。
由紀子を連れてサティーへ遊びに行った。
エスカレータを登った途端、
由紀子が耳を押さえて走り出した。
後を追いながら見るとおもちゃ売り場にテレビで
「トトロ」のビデオが流されていた。
例のごとく大好きな「トトロ」のビデオなので嫌なのです!
でも、私には何も聞こえなかったのに由紀子にはトトロの声が聞こえたのだろうか?

19日(月)
今日は保育園の散歩で中央公園に行き、
アスレチックのような遊具にがんばって挑戦してきたらしい。
以前に比べるとみんなと同じ事をしたいという姿勢が見られて、
いろいろな遊具を嫌がらず自分から登ったりしているとの事だった。
おともだちの存在を意識できるようになった事が嬉しい。

20日(火)
お風呂に入る時お父さんが
「今日は頭を洗うぞ!」と声をかけたら、
トイレに行きかけていた由紀子が
急にお父さんに擦り寄って頭を匂ってくれというポーズをとった。
それがまるで、「今日は頭、臭くないでしょう?! ねえ?!」と言いたそうで、おかしくて。
お父さんもつい「仕方ない今日はお顔、ふきふきでおわり」と言ってしまった。
その時の由紀子の嬉しそうな顔。本当に面白い子です。

21日(水)
今日もお風呂の時間になったら、
お父さんの胸に頭をつけに来た。
「だめ!今日は頭を洗う!」と言われた由紀子。
「きょうは…・。きょうは…・。」と言いながらお風呂場に消えていきました。
笑ってしまう。

22日(木)
保育園で鼻血を出した。
給食の食器を食堂に持って行った時、
いつもなら寄り道をしてなかなか帰ってこない由紀子が走ってきて
「O上先生、鼻血、ふいてふいて!」と言ったそうだ。
言葉の使い方が上手になった。

23日(金)
保育園の健康診断だった。
上手に受ける事ができたらしい。
入学のための健康診断が火曜日に予定されているのでいい予行練習になった。

24日(土)
若竹の練習に行った。
スポーツの時間はコンサートの発表の練習だったが、
ブロック渡りも、トンネルくぐりも、滑り台も得意。
滑り台の上でのポーズもバッチリでした。
でも、音楽は、ドラえもんの歌がどうしても受け入れられず、
耳を押さえて私の腕の中で硬くなっていた。
みんなに「嫌いなの?」と聞かれ
「いいえ、大好きだからだめなの!」と答えるが
みんなは「?????」です。

25日(日)
少し風邪気味。
本当にどうして療育センターが近づくと体調が悪くなったり、
天気が悪くなったりするのかしら。

26日(月)
久し振りに療育センターへ。
由紀子はジェットフォイルの中もバスの中も
上機嫌で少し興奮気味だった。
療育が始まってビックリしたのは、
今まで絶対に登ろうとしなかったはしごを自分から登った事。
初めは登った事にも気づかず、
どうやってあの高い所に登ったのだろうと思った。
2回目はわたしの目の前でするすると登っていった。
由紀子の中で何が起きたのだろう…。
3年間療育の療育の結果を見たような気がし

27日(火)
今日は就学前の健康診断だった。
由紀子はとてもがんばって辛抱強く順番を待ったり、
初めての場所にも嫌がらず、とてもおりこうさんでした。
でも、いく先々の検査の時に
「この子は自閉症なので、」といわなければならない場面があって
わたしは少しつかれてしまった。
視力検査の時は片目を押さえて答える事ができず、
両目でお願いした。
聴力検査は電子音か聞こえたらボタンを押して、
消えたらボタンをはずしてください。
の説明に思わずため息が出てしまった。
無理だと説明しても一応させてくださいといわれ、
終わった後に「測定不能と書いてくださっていいですよ。」というと
「聞こえていたようなので丸をしました。」と言われた。
何のための検査なのだろう? 
他の検査も同じような感じだった。
廊下で他の子どもたちに混じって順番を待つ時、
何かが込み上げてきて涙が出そうになった。
ぐっと堪えながらこれから先何度もある事と自分に言い聞かせて帰ってきた。

28日(水)
芋掘り遠足。
たくさんのお芋をリュックに詰めて
30分の道程を歩いてきたと聞いてビックリしてしまった。
土の中のお芋を見つけた時、
手で一生懸命掘って、ひっぱっていたと先生に聞いて
3年前の芋掘りの時に、
泥をさわることができずふきの葉っぱで遊んでいた事を思い出して
成長したと思った。
おいしいお芋でした。

29日(木)
2本目の歯が抜けていた。
最初の歯は26日に療育センターにいくジェットフォイルの中で
抜けている事に気がついた。
その時もだが抜けた歯が見当たらない。
ひょっとしたら由紀子のおなかの中かな?

30日(金)
最近おねしょをしなくなった由紀子が
2時ごろ久し振りに失敗してしまった。
そのせいなのか3時ごろしくしく泣き出して1時間ほど続いた。
夢を見たのかもしれないが、
訳もわからず泣かれるのはつらい。
朝は2人とも睡眠不足。

31日(土)
今日は保育園の先生たちにパッチワークの講習会をしにいった。
1時半から初めて終わったのが5時半。
その間由紀子は他の居残りの子どもたちと別の部屋で保育をしていただいた。
家においてくるより安心できていいのだが、
4時を過ぎて他の子どもたちのお迎えが始まると
由紀子が心細くなっているのではないかと心配になってしまい
「先生、ここに連れてきてもいいですか?」といってしまった。
先生が様子を見にいってくださったら、
ニコニコして遊んでいるとの事だった。
子離れしていない過保護な親の姿をさらしてしまって少し恥ずかしかった。
一人になって連れてこられた由紀子はそれでも平気な顔をしてニコニコしていた。
恐れ入りました。