1998年5月

1日(金)
 今日は保育園でこどもの日のお祝い会があった。
玉入れゲームの時、赤いお手玉を持ってニコニコして立っているだけで
中に入らないなと思っていたら、
やめ!の合図があってみんなが席に戻ってから
ひとつ持ったお手玉を先生のところに持っていきうれしそうに入れたのだそうです。
みんなが動き回っているのをどんな気持ちで見ていたのだろう・・・
何でそんなに争って入れるのだ?ゆっくり入れに行けばこんなに簡単なのに!
とでも思っていたのかな?!

2日(土)
 家では洗面所にいる時間がとても長くなった。
たいくつすると洗面所に行くようだ。
そして洋服を濡らす度に「お着替え」と言って戻ってくる。
一日に3〜4回は着替えることになる。
「そのまま遊んで、後で着替えようよ」と言うとパニックになってしまう。
休みの日の洗濯が大変なのです。

3日(日)
 お父さんと3人でコンカナ王国に出かけた。
ソフトクリームを買ってもらってうれしそうに走っていたら
ポッタッとクリームが落ちてしまった。
何とも悲しそうな顔をして私を見た顔があまりにかわいくて、
つい笑ってしまった。
お父さんのソフトクリームをカップに分けてもらって一件落着。

4日(月)
 大きなスーパーに由紀子を連れていく。
スーパーが大好きな由紀子だったのに、
店内に流れる音楽が嫌な様子で、
耳を押さえて『お家に帰ろうか』という。
少しずつ今までと違った反応が出てきて
昨日まで大丈夫だったことが駄目だったり、
平気になったり様子を注意していないとわからなくなりそうです。

5日(火)
 やっと今日でお休みが終わる。
お姉ちゃんたちはもう、自分たちの都合で動くので
由紀子とお父さんと3人のお休みのようなものだった。
お父さんも出かけてしまうと由紀子と2人きり。
絵本を読んでやろうと手に取ると走ってきて「おしまい!」。
お絵かきしようか!というと「おしまい!」
ビデオを見ようとセットしようとすると「おしまい!」
CDを聞くことも一緒に歌うことも全部「おしまい!」
どうしたらいいのか分からなくなってしまう。
唯一、一緒に遊んだのがシャボン玉。
部屋の中で毎日やった。
おかげでここ数日とても上手になった。
大きいのや小さいのや自由自在です。

6日(水)
教育委員会に行って就学相談について話を聞いてきた。
あちらから話がくる前に学校などを見に行っておきたかったので
先手を打って自分から出かけてみた。
就学相談の手順などを丁寧に話してもらえてよかった。
学校の見学も仲介をして下さると言うので任せることにした。
◎福江小学校の普通クラス(自閉傾向の子どもが通っている)・ 特殊学級(今年度は1人。)
◎崎山小学校(今年新設された複数人の特殊学級)
◎久原養護学校
5月の後半から6月のはじめに日程を決めてもらうことにしてきた。

7日(木)
いつも保育園から帰ると「今日は誰と寝たの?」と質問され
「O上先生寝たの」と答えるのが日課なのだが、
今日は返事がなかった。
「どうしたの?先生いなかったの?」と聞いてもしらんぷり。
でも寝るときに「M田先生寝たの。よかったね」と突然言った。
隣のクラスの先生のことだけど
きっと名前が浮かんでこなかったのだろう。
思い出してうれしそうに何回か口にして眠った。

8日(金)
昨日の事を尾上先生に話したら、
「いいえ私と寝ましたよ。
途中で起きて鼻血が出たり,おしっこを漏らしたりしたので
分からなくなったのでしょう。」

と言われた。
おいおい!由紀ちゃんしっかりしてよ!!
おもちゃのキーボードで遊んでいた由紀子が♪さいた〜さいた〜♪と、
チュウリップのメロディを弾いていた。
最初のメロディだけだったけど
耳から覚えた音をキーボードに乗せることができればこれからの楽しみになる。

9日(土)
保育園から母の日のプレゼントを持って帰ってきた。
毎年お母さんの絵を持ってくるのだけれど去年の私の顔は丸に点々だった。
今年はどんなだろうと思っていたら、
なんと!ちゃんと顔がかいてあった。
しかも髪の毛つきです。
一年でこんなに上手になるなんて
うれしくてたまらない母の日になりました。
でも、「このお顔はだあれ?」と聞いたら
元気いっぱい「ゆきちゃん!」と答えた。 えエ〜!

10日(日)
テレビを見ていて嫌なシーンになると
「おしまい!おしまい!」
とパニック寸前になるゆきこですが、
最近はテレビのリモコンを持って誰かに変えてくれとやってくる。
それと反対に変えられたくない番組の時は
お父さんの手からリモコンを取り上げて自分で持っている。
他の誰が言っても自分の好きな番組にしてしまうお父さんも
この行動には逆らえないようです。

11日(月)
 療育センター。 
今日は天気が悪くて行きも帰りも船がすごい揺れで、
行きは途中で海の上で船が止まるし、
帰りは混んでいて身動きがとれないし散々だった。
帰りの混雑に由紀子がイライラしてきているのに気がついていたけれど、
どうしようもなくて早く着くことだけを祈っていた。
その願いもむなしく、後30分ほどの所でパニックを起こしてしまった。
回りの人たちはみんな船酔いで気持ち悪そうなのにどうしたらいいのか・・・
トイレに連れ込んで静めていると今度は鼻血!
私が泣きそうになってしまった。
10分ほどで落ち着いてストレスを発散した由紀子はケロッとしていたけれど、
私は家に帰っても動けないほど疲れてしまった。
本当に大変な1日でした。

12日(火)
今日は整枝療育園の巡回相談日だった。
O尾上先生も一緒に来てくださった。
整枝療育園の相談の時にはいつもプレスクールを勧められる。
今の家庭の事情では一月も家を空けるわけには行かないのでお断りしたのだが、
わざわざ電話がかかってきたりビデオを用意してくださったり心苦しいほど勧めてくださる。
でも、身辺自立もできて集団でもうまくやっている由紀子に今プレスクールが必要だとは思えない。
保育園での1月の方が今の由紀子には大切なような気がしている。
相談の後、O上先生と2時間ほど喫茶店で由紀子の様子と就学について話が出来た。

13日(水)
昨日O上先生に、
「お母さんが由紀子ちゃんの力を確かめようとしていることを
見抜れていませんか?」
と言われたことを思い出しながら由紀子と接していた。
確かに最近私は由紀子に課題ばかり与えていたような気がする。
私が絵本に触ることさえ拒否するのは、また何か聞かれると思っていたからなのか・・・・。
就学のことばかり考えて由紀子にプレッシャーを与えていたことを心から反省。

14日(木)
 教育委員会に学校見学の希望日程を文書にして提出してきた。
福江小学校の自閉症の子どもが通っている普通学級は・算数か国語の時間と体育の時間。
特殊学級は単独の時間と親学級との交流の時間。
崎山小学校は複数人の特殊学級単独の時間と
低学年の子どもさんの親学級との交流時間。
そして久原養護学校。
少し図々しいかなと思ったけどいっそ見るなら全部見せてもらおうと思った。

15日(金)
 鼻血がまた始まった。
保育園では自分で何度もふきながら始末をしていたと先生のお手紙にあったが、
家でも自分で始末できる量の時は何とかやっているが
何度もになると「おかあさ〜ん!」と半べそかいてやってくる。
鼻血が流れ出てくることは絶対に嫌!
そして、ティシュを鼻に詰められるのも絶対に嫌!
・・・・・どうするのよ!! 
教育委員会から電話があって学校見学の日にちが決まったと連絡がきた。

16日(土)
 テレビのポンキッキという番組の中で「チャカポコ」というゲームがあります。
同じ仲間の名前を交互に言い合って詰まった方が負け。
朝から由紀子が私の横で「チャカポコ・チャカポコ・イチゴ」と言ったので
続けて「チャカポコ・チャカポコ・りんご」と私が言うと
「〃・〃 ・みかん」と答え、
バナナやブドウと同じ事を何回も言ったりしたけれど、
長く続けることが出来ました。
初めて由紀子とゲームをやりました。

17日(日)
今日の日曜日もみんな出かけて由紀子と2人きりのお休み。
お天気も悪いし退屈な1日。

18日(月)
 保育園では何でも食べるのに家では相変わらず好き嫌いの多い由紀子。
今日は唐揚げを作っていたらおいしそうにパクついていた。
固まりにかみつく事をあまりしないと思っていたけど結構あごも強いじゃん!!

19日(火)
車を友人に貸すので今日のお迎えはお父さんです。
以前は必ず私が行かないと泣いていた由紀子ですが
最近はお父さん一人のお迎えでも大丈夫。
私はとても楽になりました。
帰宅してドアを開けると「おかあさん・ただいまあ!」と大きな声が帰ってきた。
夜は子ども劇場の例会日「ブレーメンの音楽隊」を観劇。
でも15分で「帰ろうか!」と言いだしておしまい。

20日(水)
今日から朝もバスで保育園に行った。
由紀子はバスが大好きだからこんな予定の変更ならご機嫌です。
10:00から保育園の行事の聖母行進が有るので見学に行くことにした。
マリアの園という老人ホームであったのだが、とても厳粛ですてきだった。
由紀子は白いドレスを着せてもらって花びらの入ったかごを首から下げて入場してきた。
とてもかわいかった。保育園以外の場所でもパニックになることもなくすごくリラックスしているように見えた。
O上先生の話では保育園の園児の中で一番マリアの園にきているのが由紀子らしく
ホームの先生方もみんな由紀子のことを分かったくださっていて
優しく見守ってくれているのだとか。
信者でもない由紀子を受け入れてくださる優しい人たちに感謝!

21日(木)
保育園では靴を履いたり脱いだりするときに腰を下ろすことは許されない。
尾上先生が見ているときにはちゃんと壁に手をついてがんばってやっているのに、
先生が見ていないとぺたっと床に座って履いている。
こらこら!お母さんが見ているときも許さないからね。
小学校に入った時のための練習です。がんばりましょう。

22日(金)
 今日からO上先生が長期の出張で31日まで不在です。
一番の心配はお昼寝です。
由紀子は今でもO上先生に添い寝をしてもらって寝ているのです。
去年の担任の先生がO上先生の代わりにねせつけられるようになるまで
、かなり大変だったと聞いているので
副担任の先生はかなり苦労するのではないかと思います。
(副担任の先生は今年の3月に転勤してきたばかりです。)
案の定今日は夕方から機嫌が悪くて、8時30分には寝てしまった。

23日(土)
 今日は 若竹の会の練習日。
結構まじめにブロック渡りや輪くぐりをがんばっていた。
今日から高校生のボランティアの男の子が来てくれていた。
由紀子はおんぶしてもらったりしてご機嫌でした。

24日(日)
衣替えをしていたら自分の水着を見つけて
「プールいこうか!」「プールいこうか!」とせがまれる。
でも、天気は曇っているし、由紀子も風邪気味だし、
一番の問題は私の運転で遠いあのプールに行ったことがないこと。
今日も由紀子と2人きりの日曜日で、お父さんも居ない。
かわいそうだけどプールはまた今度ね!

25日(月)
 夜中に鼻血が出る。
久しぶりのひどい出血で枕元にはティシュの山が出来た。
ボタボタと落ちてくる血を見ていると、
このまま止まらないのではないかとほんとに不安になる。
何回やってもこれだけは慣れない。
朝、保育園にやるときO上先生が居ないときに
こんな出血があったら先生方はどうするだろう・・・・
と不安いっぱいで登園させたが保育園では何事もなかったようだ。

26日(火)
「今日は誰と寝たの?」と聞いても黙ったまま他のことをしている。
今日もお昼寝が出来なかったらしい。
夜寝る時間が早くて私は助かるのだが・・・・
最近寝る時間が長いのにおねしょをすることが無くなった。
この間まで紙おむつをしていないと2度も3度もおねしょをして大変だったのに。
また1つ成長の節目を越えたような気がする。
今日から小学校の見学が始まった。
福江小学校は今日と明日。

27日(水)
福江小学校の見学が終わった。
正直なところ特殊学級と普通クラスを比べると数倍特殊学級の方がよかったのだが、
特殊の先生と今日見せてもらった普通クラスの先生の仲の悪いことに驚いた。
普通クラスの先生は来年定年という女の先生だが、
公然と特殊の先生のやり方を非難していた。
現在特殊に在籍している女の子の1年生時の親学級の担任だったそうだが、
厳しくて1年間泣かせ放しだったとか、
交流の時に他の生徒の面倒ばかり見て受け持ちの女の子はほったらかしだとか…。
2人とも性格がはっきりしているようなのでぶつかっているのかと思うが、
他の女の先生方もみんな親学級になることをいやがっている、と聞くと不安になってきた。
でも、私には特殊の先生と生徒の間には人間関係が出来ているように見えたのだが・・・・
なんだか別の意味で悩みが増えた気がする。

28日(木)
今日は保育園でお昼寝をしたと先生からうれしそうなお手紙があった。
本人もうれしかったのかお迎えに行くと
「Mだ先生、寝たの。そう!よかったね!」
と報告してくれた。
O上先生が居ない日もあと少し、
ちゃんとお昼寝が出来るようになっていればほめてもらえるかもよ。

29日(金)
 新聞の広告にトランポリンのようなビニールプールを見つけた。
ちょっと値段が高いので迷ったが、
今まで揺れ物が駄目だった由紀子が 
最近ボールの上に腹這いで乗って弾んでいたり、
ボールの上に立たせてくれとせがんだりするのを思うと今が必要なときのような気がした。 
保育園から帰ってそれを見つけた由紀子はさっそく中に入ってくつろいでいた。
そして絵本を持ち込んだりしてなかなか出てこない。
まるでボールプールのような感じがしているのかもしれない。
お父さんもいい物を買ったねと言ってくれた。
でも、大きい!
寝る場所が無くなってしまう。
枕元に立てかけたプールが今にもかぶさってきそうで怖い!

30日(土)
朝から保育園に行きたくないようなので
「もうすぐO上先生が帰ってくるよ!」といったら、
「Oうえ先生いない!」と繰り返し言った。
やっぱりさびしいのかな?

31日(日)
 土曜日の11:30突然、呼吸困難になって五島病院に入院した。
ケンケンとした咳をしたかと思うと突然息が苦しそうになった。
まるで、喘息の発作のような状態だった。
診察してもらったら声帯の下が腫れて,気管が狭くなっているという事だった。
呼吸は吸入で何とか楽になったが入院が必要ということだった。
先生が自閉症の事にとても気を使ってくださって入院も私の希望を聞いてくださった。
点滴をしたときの反応が分からない、
パニックになったときに回りの方に迷惑をかけそうだと、お話ししたら
小児科のプレイルームに蒲団をひいて入院できることになった。
でも由紀子は私の心配に反していとてもお利口だった。
点滴の針を入れるときはパニックってわけの解らないことを叫んでいたけれど、
そのあとはおとなしく横になっていた。
 その夜は親子とも4時頃まで眠れなかった。
翌朝、点滴につながれたままの由紀子がとてもかわいそうだった。
食欲がない上に、食事が大人でも食したくないような物ばかり出てくるので口にしようとしない。
果物を買ってきてもらって何とか口に入れさせる。
看護婦さんたちに声をかけられると
「おはよう」「おしまい」相変わらずの返事。
看護婦さんが由紀子に、どう接していいのか迷っているのが私にも解った。
だから、由紀子はなおさら心を開かない。
この状態の中でパニックを起こさずにがんばっている由紀子を見直した気がする。
でもお父さんが見舞いに来てお姉ちゃんに「さあ、かえろうか!」と声をかけたとき
慌てて「お母さん」といって点滴の手を差し出してきた。
きっと自分も帰れると思って、はずしてくれと言いたかったのだろう。
かわいそうに。